皆様、こんにちは!Minconパートナーズの足立です。「これを読めばM&Aは怖くない!!」連載7回目になりました!少し時間が空いてしまいましたが、連載は継続しております!!少しでも皆様に必要最低限の知識が届けられていましたら大変うれしく思います!
さて、前回は、「基本合意②」と題しまして、「基本合意書への記載事項に対して、どのように準備をすすめていくか」にスポットを当てました!
今回は、最終契約に向け、M&Aプロセスの第二の山場である、デューデリジェンス(以下、DD)に関して、特に、実務的に重要な「DDの進め方」を中心にお話いたします!
本連載では、経営者の皆様が今まで積み上げてこられた経験・技術、ノウハウ・人的ネットワーク等の無形資産を、次の世代に継承し、日本を盛り上げるべく、M&Aをもっとより身近に感じていただきたく、執筆いたしました。もし、まだ読まれていない方はぜひ過去分をご覧いただければと思います!M&Aに対する意識が少しでも変わるよう、経営者のひとつのオプションとして、常に選択できるよう、まずは必要最低限の情報をご提示できればと思います。
全10回を予定しておりますので、ひとつでも多くご覧いただき、M&Aに対する意識が少しでもポジティブになればと思います!
はじめに
特に、買い手における、M&Aの一般的なプロセスは以下のとおりです。
さて、今回は、下図の赤点線で囲んだ箇所について、順に触れていきたいと思います。
DDの目的
DDの主な目的は、①対象企業のリスク抽出と、②成約後の経営統合準備になります。
① 対象企業の抱えるリスク抽出
リスク抽出に際しては、公認会計士や弁護士などの専門家の関与が必要となりますが、留意点として、取引価格の大きさとリスクの大きさが必ずしも比例しない点が挙げられます。
昨今では、取引価格1億円未満のスモールM&Aが非常に多くなっており、取引価格に比して、DD費用負担が大きくなることから、DDを行わない譲受企業様もいらっしゃいますが、譲受後のトラブルを回避するためにも、最低限のDDを行い、会社の実態を少しでも把握することが必要です。
② 成約後の経営統合準備
基本合意以前では、得られなかった対象企業に関する詳細な経営情報を入手することで、対象企業の経営実態を適切に把握し、成約後の統合計画の策定が可能となります。
DDでの分析結果を通じて、譲受によるシナジー効果とリスクを明らかにし、シナジー効果を最大限に発揮させ、リスクを最小限におさえることを意図した統合計画を策定することが重要となります。
DDの主な種類
財務・税務DD
財務、会計、税務面から、過去の損益状況を調査し、現在の財務状況及び将来の損益予測のベースとの整合性を確認するために行います。
単に、会計処理の誤りや簿外債務を抽出するだけでなく、取引価格や統合計画に大きな影響を与える、将来の事業計画の妥当性を検討する点が重要です。
そのため、ビジネスDD(後述)と調査項目が重複する部分も多く、財務・税務DDの実施者とビジネスDDの実施者は、緊密に連携することが非常に重要です。
なお、財務・税務DDは、弊社のような財務コンサルティング会社や、監査法人(会計事務所)や税理士法人(税理士事務所)が等に委託することが一般的です。
法務DD
法的なリスクを抽出し、取引スキームや取引価格、最終契約等の交渉を効果的に進めるための情報収集・調査をします。
独占禁止法や外国貿易法等に抵触するなど、検出されたリスクが重大である場合は、取引自体を断念せざるを得ないこともあり、欠かせない手続の一つです。
なお、法務DDは、法律事務所(弁護士)に委託することが一般的です。
ビジネスDD
対象企業の事業性及び統合によるシナジー効果とリスクを評価するために調査を行い、その結果は、取引後の収益予測と統合計画の策定に活用されます。
この結果、当初予想していた収益見通しに変更があり、かつ、DCF法でバリュエーションを行っている場合、取引価格に変更影響を反映する必要があります。
なお、ビジネスDDは同業他社の譲受の場合、譲受企業がその業界に精通していることから、譲受企業自身で実施し、異業種の場合には、業界に精通している経営コンサルティング会社に委託するケースもあります。
DDの進め方
計画策定
まずは、先述のどの分野のDDを実施するのかを決定します。基本的には、財務・税務、法務、ビジネスが必須となり、その他、特段の懸念事項の有無により、当該分野の専門家によるDDを行います。
一般的に、大手の会計事務所・監査法人や法律事務所は、調査・分析能力が高いが、その分報酬も高いケースが多く、調査レベルと報酬水準を考慮し、案件ごとに最適なDDの実施機関をアレンジする必要があります。
財務・税務DD及び法務DDを外部に委託する場合、取引価格数億円規模の案件でも数百万円、10億円以上の中規模案件であれば数千万円、100億円以上の大型案件であれば1億円以上の費用が発生する可能性があります。
DDは非常にタイトなスケジュールの中で実施されるため、重点的に調査を行う項目を特定しておかないと、時間切れとなってしまう恐れがあります。
あらかじめ、譲受側で想定される重点範囲をもとに、DDの実施機関と調査範囲や大まかなスケジュール、体制等をすり合わせることが望ましいです。
DDの調査範囲が固まると、必要な社内外の人材をチームとして編成する必要があります。ここで、特に重要なのは、成約後に対象企業のマネジメントに参画予定とされる社内の人材をチームに加えておくことです。これにより、統合後のマネジメント(PMI:Post Merger Integration)が円滑に進められます。
一般的に、対象企業の会議室、あるいは対象企業の近所のホテルや貸し会議室など、できるだけ人目につかない場所でDDが実施されます。
近年、資料のデータ保存が多くなっており、インターネット上に仮想のデータルームを設置し、ID及びパスワードを用い、限られたメンバーのみアクセス可能な、バーチャルデータルーム(VDR)が活用されることが増えています。
一般的なスケジュールは以下のとおりです。最終契約に向けた交渉期間も考慮し、DDのスケジューリングを行うことが重要です。
実施
キックオフミーティングでは、チームメンバーの紹介、DD実施要領やスケジュールの説明、必要資料に関する情報交換などが行われます。情報管理上、関与者が10名以上になる場合、事務局の設置やメンバーリストの作成を行い、DDの関与者を把握することが望ましいです。
対象企業が中小企業かつ非上場企業の場合、必要資料が十分に整備されておらず、資料準備に相当程度の時間を要するケースがあるため、必要資料の中で優先順位をつけて準備してもらうことが重要です。
調査自体は、DD実施機関ごとに粛々と進められますが、譲受企業のM&A担当者は、調査開始日やマネジメントインタビューなど重要場面に立ち会うことが望ましいです。日々の進捗状況や発見事項については、譲受企業側のフィナンシャルアドバイザーを通じて確認します。
一般的に、調査開始日に実施されることが多く、キーマンとなる経営陣に対するインタビューを通じ、対象企業の概要だけでなく、経営陣の考え方についても、一度に理解することができるため、非常に有用です。
ある程度の調査結果がまとまると、中間報告が実施され、中間報告時に報告されたリスク事項に対する追加調査結果を踏まえ、最終報告がなされます。
なお、事後的であっても、対象企業の心証を悪くする恐れがあるため、報告書を対象企業へ開示することは避ける必要があります。どうしても開示する必要がある場合には、該当箇所のみを抜粋することが考えられます。
最後に
今回は、M&Aプロセスの第二の山場であるDDについて、特に実務的な「DDの進め方」を中心にお話いたしました!
次回は、より具体的な各DDにおける着眼点に加え、各DDで検出された事項についての対応方法について、お話させていただきます!最終契約に向けて、DDの結果はどのように反映されていくのかにスポットをあてて、お話させていただければと思います。
次回もぜひお楽しみに!!